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2023.12.06 そばの産地

埼玉三芳産 秋そば大地 入荷しました。

みよしそばの里 大地 入荷しました。 夏と秋、茫漠と広がる畑は、白く可憐なソバの花が一面に咲き誇る花畑になる。一般的にソバの産地といえば、秩父など山間部が主流だ。ところが、江戸時代から川越いも(サツマイモ)の名産地として名高い三芳町でも、ソバが栽培されている。 そば屋さんとの出会いで、そばの底力に開眼 そばを科学! 新そばだけじゃない、熟成そばもまた魅力 畑のある景色を守るため、小麦からそばへ 「もともと地域の畑を守りたい、という思いからスタートしているんです」 そう話すのは、代々農家で、1995年から町で唯一ソバを栽培する『みよし そばの里』2代目の船津正行さんだ。近隣の耕作放棄地を含めた約5haの土地で、初めは小麦を1989年から栽培した。しかしあるとき、畑に病害が出てしまった。行き詰まった際に声をかけたのが、先代のそば好き友人。「そばなら播いて刈るだけ。手間はかからないよって。いやぁ、悪魔のささやきでした」と、笑う。 『みよし そばの里』2代目の船津正行さん。 『みよし そばの里』2代目の船津正行さん。 収穫した状態の殻付きの玄そば。このまま、碾きぐるみにすることもある。 収穫した状態の殻付きの玄そば。このまま、碾きぐるみにすることもある。 農家にとって、補助金が出ないそばは、採算の合わない作物だ。しかし、畑を管理するため、どのみちトラクターを走らせねばならない。それならばと、比較的荒れた土地でも作れるソバ栽培に着手した。作り方は、スズメがきたら食べられる、霜に当たったら枯れる、風が吹いたらこぼれる、だからそこだけ気をつけて、と聞いたぐらい。 「この辺りは、嫁に来たらうどんが打てないとダメと言われたほどのうどん文化の里。そばはめったに食べないし、ソバの作り方もわからない。間違った情報が多かったんです」 先代は手探りで、夏と秋1品種ずつ、二期作でソバを作り始めたのだった。 そば屋さんとの出会いで、そばの底力に開眼 肥料や土作りなど、試行錯誤を繰り返し、最善を尽くすも、味が薄いと言われた時期があったという。その頃に出会ったのが、京都のそば屋『拓郎亭(たろうてい)』店主だ。「乾燥が甘い。乾燥次第で化けるよって言われたんです」。 最初は疑っていたが、実際に拓郎亭さんが独自に乾燥させた粉となめ比べてみたら、その差は歴然。「そのとき、わたしのなかでようやく基準ができました」。 石臼で碾いたそば粉。 石臼で碾いたそば粉。 そして、そば研究に拍車がかかる。 品種、肥料、栽培方法など、「今まで一度として同じ栽培をしたことがない」と話すが、どういう天候のときに、どう味が変化したのか知りたい。そこで頼りにしたのが、そば屋さんたちだった。 「肥料違いのそばを渡すと、レポートを送ってくれるんです。一人だけじゃなく、数が多ければ多いほど、そばの方向性が見えてきますから」 店主たちとの付き合いの始まりを尋ねると「告白ですかね」と、船津さんは笑顔を見せる。「付き合ってくださいって飛び込みでいらっしゃる方が多いかな」。 とはいえ、収穫量に限りがあるため、付き合える店舗数にも限りがある。現在はお断りすることも多いが、それでも名前を記録し、閉店などで空きがでると連絡をとるという。「時間がかかることはありますが」。 船津さんがこれを実感したとき、故父が忘れないように作って掲げたという社是。 船津さんがこれを実感したとき、故父が忘れないように作って掲げたという社是。 そんなそば屋さんの一人が、大宮『久霧(ひさぎり)』2代目、久森賢一さんだ。 「10年ほど前、食べ歩きする中で三芳産の味の強さにほれて、修業が終わったら付き合わせてくださいって、飛び込みでお願いしたんです。うちは出前もする町のそば屋ですが、店に戻ったら手打ちしようと思ってたんです。今は手碾きで製粉もしますが、ソバ作りをときどき手伝いながら、いろいろ勉強させてもらってます」 そばを科学! 新そばだけじゃない、熟成そばもまた魅力 8月下旬に種まきした秋そばは9月下旬に花を咲かせ、10月下旬頃に収穫期を迎える。 8月下旬に種まきした秋そばは9月下旬に花を咲かせ、10月下旬頃に収穫期を迎える。 三芳のそばは、粘り強いと称されている。 「どうして粘るのか、土地の力なのか、肥料なのか。同じ条件で分析してみないと、わからないんです」 そんなとき、そば屋主催の新年会で「同じ品種でも場所が変わると味が違うの〜?」という他愛のない一言に発奮した。居合わせた同世代の生産農家とタッグを組み、共同研究を開始。千葉、茨城、埼玉、長野で、同品種を撒き、収穫、製粉する産地比べだ。他にも、1週間刈り取りをずらして色味の変化を探るサンプル調査も独自に行うという。 玄そばの硬い殻をむいた抜き実。美しい緑の実が印象的だ。 玄そばの硬い殻をむいた抜き実。美しい緑の実が印象的だ。 過去には、ソバの天敵である台風や日照不足が、かえって味をよくすることなども発見。疑問はすべて実践で調査。それを繰り返している姿には脱帽するばかりだ。 かと思えば、偶然から研究が始まることも。たまたま、順番待ちで忘れていたそばを冷蔵庫の片隅に見つけ、試しに久森さんが手打ちしてみると、 「2016年度のは、やばかったよね」(船津さん) 「あれは、すごかった。味が深〜くなって香ばしさが増してたんです」(久森さん) さらに、年月を経て味がのって化けることや、ソバが呼吸しやすいよう、真空パックではなく紙パックで保存することで、そばらしい香りをまとうことも突き止めた。新そばこそ最上、とは限らないのだ。 久森さんは話す。 「ぼくら打ち手は、農家さんが作った100のソバの力をいかに引き出すか、なんです。だから、そばのことは知りたい。そうすると、ここに来ちゃうんです。この人、変なことばっかりやっているから、毎年発見があって、おもしろいんです」 自動運転トラクターで秋そばの種まき。筋つけ、種まき、土かぶせを一度にするスグレモノだ。 自動運転トラクターで秋そばの種まき。筋つけ、種まき、土かぶせを一度にするスグレモノだ。 船津さんは、「いつか全部やり尽くして、そば作りを終えたい」と漏らすほど、深みにはまっている様子。そして、「土地、仲間を増やして、独立したい人が出てきたら後押しできるようにしたい」と、後進を育てるべく、農業法人も設立した。三芳のそばの粘り強さは、案外この熱意ゆえ、生まれているのかもしれない。 三芳産そばは、周辺の地元そば屋でも味わえる。まずは、実感してみるべし、だ。 そばレンジャー見参。「仲間がいる限り続ける」という思いを込め、揃いのオリジナルTシャツを着て、今日もそばを丹精する。左から3人目が大宮『久霧』2代目。 そばレンジャー見参。「仲間がいる限り続ける」という思いを込め、揃いのオリジナルTシャツを着て、今日もそばを丹精する。左から3人目が大宮『久霧』2代目。(散歩の達人より)